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◆定義と目的

 

1. UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の事業の大部分は、難民1が突然流入して、緊急事態が起きた結果始まる。UNHCRの組織体制もこれを反映しており、UNHCRの通常業務の大部分は、実質的には緊急事態への対応である。だが、明らかに特別な配慮を要する事態も発生する。このハンドブックは、そうした様々な状況への対応を取り上げる。

 

緊急事態の定義

2. UNHCRの目的、及びこのハンドブックにおいて、「難民緊急事態」とは以下のように定義される。

即座に適切な行動を取らなければ難民の生命や福利が脅かされ、なおかつ特別な対応と措置が要求される状況。

 

3. 重要なのは定義ではない。難民の生命と福利を守るために、UNHCRによる特別な対応が必要とされる状況を即座に、かつ的確に認識する能力である。

 

4. ハンドブックの大部分は、多数の難民が庇護を求め、国境を越えた時――つまりは突然の難民流入による緊急事態――に必要とされる保護と物的援助の指針について書かれたものである。

 

5. UNHCRが特別な対応を求められるのは、突然の難民流入のような緊急事態だけではない。別の種類の緊急事態でも、同じような対応の素早さが要求される。例えば、何らかの事件が起きて、それまで安全に庇護を受けていた難民が、突然危険にさらされることも起こりうる(第2章で詳述)。大規模な難民帰還などでは、事業の最終段階で緊急事態が起きる場合もある(第19章で詳述)。さらに、複合的な緊急事態、すなわち複数の国連機関が関わる人道危機もある(詳細は第7章を参照)。このハンドブックに記されている一般的指針は、こうした緊急事態にも役立つだろう。

 

目的

UNHCRの緊急事態対応の目的は、UNHCRの援助対象者を保護し、必要な援助が遅滞なく届くよう取り計らうことである。

 

◆責任

 

政府とUNHCR

6. 難民受け入れ国政府には、その領域内にいる難民にかかわる治安と安全、援助、法と秩序についての責任がある。政府は、負担の分担を国際社会に依存する場合が多く、UNHCRは、政府の要請に応じて難民援助を行なう。

ただし、難民に国際的保護を与え、難民問題の恒久的解決策を追求するというUNHCRの設立規定によって定められた役割は、UNHCR不変の責務である。

 

7. 緊急事態事業におけるUNHCRの最大の任務は、難民の保護である。UNHCRは、政府の仕事を支援・補完するために、国際社会とのパイプ役を務め、援助の実施を調整する。政府の要請により、どのような組織体制で緊急援助を行なうにしても、難民保護と迅速な物資援助を有効、かつ適切に実施することがUNHCRの責務である。

 

1 便宜上、本ハンドブックにおいて「難民」とは、UNHCRの援助対象者すべてをいう。難民など、援助対象者の各カテゴリーは第2章で定義する。

 

 

 

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