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6-2 公的補助の必要性

 

重度の障害故に社会参加のチャンスを得られなかった人達は、当然のこととして経済的にも豊かな人達ではない。返済能力もほとんどない状況から、ローンも組めない。

社会参加をするためになくてはならない道具である車が、社会参加が出来ないが故に購入できないという現実がある。

それほど少ない数ではない潜在的消費者が、確実に存在することはこのアンケートでも明らかになった。しかし彼らに購買能力がないが故に、市場としてはまだ全くの未知数と言わざるを得ない。

市場原理をもってすれば、確実な購買力が見えない限り、企業が商品開発に参入することはまず考えられない。自由経済国であれば、市場原理はどこの国でも同じはずである。

では欧米の障害者は皆金持ちなのだろうか。当然そんなことはあり得ない。市場原理にまかせるだけであれば、欧米でも障害者がこのような高額な車を買うことは困難であることにかわりはない。しかし彼らは日常の足としてこの高額な車を日々使いこなしている。

彼らが生き生きと社会参加を果たせるのは、市場原理を損なわないように、しかも重度障害者の社会参加をサポートするために、公的な補助制度が実施されているからである。その仕組みは国によって様々であるが、共通しているのは、社会参加、行動の自由を、最も重要な基本的人権の一つとして認識している点にある。したがって莫大な税金を投入して、当事者から喜ばれない『収容施設』を造るより、必要な道具に税金を投入し、社会参加のチャンスを提供する方が、当事者も喜び、税金の使い方としては遙かに効率的である。と国も国民も明確に認識している。

我が国においても、公的補助制度の創設がない限りこの種の車の普及は望めない。

重度障害者が必要としているのは『保護ではなくチャンスの提供』である。との言葉は言い古された感があるが、チャンスを手にするために必要な現実的なサポートシステムの具体化は遅々として進んでいない。

多くの日本人の中にある『高価』イコール『贅沢』という短絡的かつ貧しい価値観が、重度障害者がこのような道具を手に入れる上での大きな障壁として立ちはだかっている。

『共生』の実現のためにも、公的補助制度の一日も早い創設が望まれる。

 

 

 

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