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第6章 まとめ

 

6-1 調査結果より

 

6-2 公的補助の必要性

 

6-3 JoyProjectの課題

 

 

第6章 まとめ

 

6-1 調査結果より

 

全国全ての都道府県在住者を網羅できたのは、それなりに意味があった。圧倒的に男性の回答が多かったのは、後天的障害発生原因が労働災害、交通事故、スポーツ事故等が多数を占めており、今回のアンケートでは中途障害者の回答が多数を占めた結果といえる。年齢層は団塊世代を中心に、概ね人口比率に即しているように見えるが、このことは障害者の世界にも高齢化が確実に進んでいることを示している。出来る限り早い時期に単身移動の可能性を広げておかないと、介助の必要度が、さらに急速に進行すると考えられる。

本アンケートでは単身生活者の率は決して高くないが、今後当事者のニーズと、高齢化に伴う家族等の減少と、収容施設の増加が望めない現状から、否応なく増加するものと考えられる。手動車椅子の使用比率が圧倒的に多いが、高齢化、重度化に伴い、当事者が速やかに電動車椅子の使用に切り替えられるかどうか。これは心の問題と、制度の問題の双方に問題が存在すると考えられる。別途調査をする必要のある項目と考えている。

【個人】グループで『特に何もしていない』の比率が高いのは、移動の問題も含め、我が国には社会参加を阻む要因が多く存在することを示したものと考えられる。

介助に関しては『外出の内容、目的、目的地によって必要度が異なる』との回答が多数を占めているのは、移動関連のみならず、様々な道具を駆使することで介助の内容が変化する可能性を示唆していると考えられる。

現実的な生活と別に、多くの人が『社会を良くするために』何らかのアクションの必要性を自覚しているのは明るい材料といえる。

自動車免許の保有数は、非常に高率の結果が出ているが、筋ジス、脳性麻痺、難病等の人達も均質に調査できていれば結果はかなり違ったものになったであろう。しかし今回の条件でも非保有率の示す数値は、予測以上のニーズの存在を示唆していると考えられる。このことは非保有者数の内、『失効した』『挑戦したがだめだった』『適性検査ではねられた』『あきらめている』総数が60〜70%と高率であることが証明している。

社会的バリアに関しては、【作業所】グループが『精神的バリア』を強く認識し、『建物、構築物のバリア』をあまり意に介していない傾向がある。在宅中心の【個人】グループでは、外出頻度の低い人達も相当数存在することが予測される。積極的に社会に出ない理由付けとして、建物等のバリアに意識が集中するのではないだろうか。一方【作業所】グループでは、少なくともウイークデイは毎日作業所まで通っており、建物等のバリアに対しても障壁として感じながらも、生活者として使いこなしている様子が感じられる。実践者である彼らに、『心の中にこそ』バリアがある、と指摘する人が多いのもうなずける。

具体的目標や夢を持ち、あるいは毎日何らかの理由で外出をしている人達と、無目的または無為の生活を送っている人達との意識の差、特に積極性の差が各設問を通して浮かび上がってきたように感じられる。

介助を受けることに対して、『人手を煩わせる』あるいは『迷惑をかける』といった日本的な発想がバリアとなっている可能性も無視できない。

だとするならば、少しでも人手を『煩わせない』ですむ道具が多く開発されれば、消極的生き方をしている人達にも大きなチャンスを提供することになり、また介助にかかる人手や人件費をそれだけ圧縮できることになる。

JOY-VANに代表される、重度障害者も自分で運転できる車は、まさにその代表的な道具といえる。

 

 

 

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