(3) インフラによる制約
企業であれば、事業の拡大縮小に合わせて事務所を移動・借り増ししたり、屋内のレイアウトを大幅に変更することで対応可能であるが、国や地方公共団体では、庁舎の移動や借り増しは容易ではなく、庁舎老朽化のため大幅なレイアウト変更が難しい場合もある。
また、国や地方公共団体においてエンドユーザまで情報化が進み、LANや職員一人一台に近いパソコンの整備が行われたのはこの数年である。このため、リエンジニアリングに対応して情報システムを導入しても、職員が即座に対応することは難しいと想定される。また、町村における情報インフラの整備は未だに進んでいないという実情もある。
このように、国や地方公共団体においてリエンジニアリングを実施する場合においては、業務の改革案を検討する際に、上記のような制約についても考慮し、具体的かつ段階的な実現プロセスを検討しなければ、実現性がない提案となる可能性もある。
5-3 課題への対応検討
5-1及び5-2で示した通り、国や地方公共団体においては、リエンジニアリングを行わざるを得ない環境を作り出す「競争」という要素が少なく、また制度、人事、インフラ等の面でも拘束が多いため、リエンジニアリングに繋がる改革提案が出にくく、また出されても実現しにくいと想定される。ここでは、それらの課題を対応するための要素について、事例調査等を基に検討を行うこととする。
(1) 企業・家庭を含んだ行政ネットワークの整備
前述の通り、国や地方公共団体における手続きについては、申請書類及びその書式等が法令で定められているものが多く、住民のニーズの変化に合わせた柔軟な変更は難しい。それに対しては、豪州や国内の事例に示したように、企業や住民が必要なデータを入力していくことにより、定められた書式の申請書類を作成するソフトウェアを活用することは、企業や住民側の手続きの分かりにくさを解消するとともに、常にその時点で最新の申請書式を作成できるため、上記の課題を解決する有効な手段と考えられる。さらに、一部省庁で行われている、企業が導入した入出力装置を事前に届け出ることにより押印を不要とし、オンライン申請を可能にしている事例も、申請頻度が高い企業にとっては効果が高く、今後の一層の普及が期待される。
ただし、住民の申請・届出に関しては、用途も多岐にわたると想定されるため、豪州のオンライン確定申告実証実験のように、手続き毎に申請・届出用、のソフトウェアをインターネットでダウンロード提供し、公開鍵方式等を利用した電子認証技術を利用することにより、市販のパソコンとインターネットで容易かつ安全に手続きを行うことも可能と想定される。また、インターネットでは安全性に関し懸念があるため、CATV網等のような地域インフラを活用したVPN(Virtual Private Network)が構築できれば、安価で高品質で安全な仮想的行政サービスネットワークも構築できる。
なお、このような行政機関と企業や家庭を結ぶ行政サービスについては、誰でもが容易に利用でき、普及率も高いサービスであることが望ましいと思われる。