(a) 統計データの視覚的加工が必要な業務
行政業務では様々な統計データが取得・活用されるが、これらのデータの中には、視覚的な表現が適しているものがある。例えば、都市計画基礎調査で収集される様々なデータは、GISを利用し地図上に表示させることで、視覚的な都市の状況把握が可能になる。こういった業務はGISの導入に適している。
(b) シミュレーションが意思決定に効果的な業務
条件を変えてシミュレーションを行うことが求められる業務は、環境、防災、都市計画関係などがある。これらの業務は、シミュレーション結果を意思決定にそのまま生かすことが出来る業務である。例えば、環境分野におけるシミュレーションは、天候、風速、温度等の条件を多様に設定して行われるが、この結果は環境に関する政策形成にそのまま利用される。こうした業務にはGISのシミュレーション機能が不可欠であり、導入することで初めて可能となるものである。
(c) 住民に対して地域情報を提供する業務
都市計画に関する問い合わせなど各種の窓口対応業務や、インターネットによる災害避難場所の情報提供には、地図による場所表示が利用者にとって最も分かりやすい。こういった業務は、住民のために地域情報を整理し分かりやすく表示することが求められているため、GISの導入に適している。
3-3 全庁的GIS利用への取組みと業務分野
GISの効果的な導入とは、複数の部署で重複作業することなく効率よく活用できるシステムを構築することといえる。このためには、初めから一斉に多くの業務でGISを利用することを目指すのではなく、まずGISによる行政業務の効率化を実現しやすい、あるいはその導入効果を実感しやすい業務から導入していくのが現実的である。整備されたデータを庁内流通させることでGIS応用の幅を広げ、GISを活用できる業務を増やしてゆくことが整備の無駄がなく、しかも出来るだけ多くの分野でGISを活用してゆく方策であると考えられる。ここでは、最初にGISを導入するのに適した業務分野と全庁的GIS利用への取組みについて検討する。