(3) 自治体における利用実態
1] 利用の状況
1992年のGIS利用状況調査(State Geographic Information Activities Compendium)によると、地方自治体におけるGISの利用分野は、経済開発、自然・社会資源管理、環境保護、交通問題、厚生・教育、福祉・雇用、緊急災害・治安、公有地管理、税業務、土地の再配分・再区画問題と広範囲にわたっている。アメリカでは環境・資源管理からGISが導入されたこともあり、各業務におけるGISの重要度は、高い方から、資源管理、環境保護、交通問題となっている。社会・個人サービス分野での利用は前述の分野と比べるとまだ低いが、最近めざましく利用が延びている分野である。
またこの報告書によると、50州のうち45州政府にGIS利用に関する専門グループや機関(調整機構やユーザグループの集まり)が設置されており、多くの州政府は、1980年代中期から後期にかけて行政機関におけるGIS利用を本格化させていった。天然資源、環境、輸送がその主な分野であった。一方、地方自治体のレベルでは、1980年代の終わりから利用が本格化していった。
連邦政府作成の基盤地図としてUSGSとSCSの地図は最もよく使われている。たとえば、州政府レベルでは、USGSの1/100,000や1/24,000がしばしば利用されている。(USGS http://mapping.usgs.gov/)
最新の事例としては、USGS自然災害情報センター(CINDI)による、ホンジュラスのハリケーン災害アトラス、オンタリオ市行政情報システム、ラグナ・ニゲル市補助金運用システムなどがあり、これらについては資料編で詳述する。
2] GISコンサルタントの活躍
アメリカにおける地方自治体のGIS構築の現場では、日本と異なり、GISコンサルタントあるいはGISアナリストと呼ばれる専門家集団が、個人の資格(フリーランス)で地方自治体のGIS導入プロジェクトに参加し、活躍している例が見られる。彼らの多くは、かつて連邦政府、大手のコンピュータ・メーカやGISベンダーにおいて、専門家として公共機関や民間においてGIS導入のノウハウを積み上げてきたスペシャリストたちである。モビリティの高いアメリカならではの働き方といえるが、個人の知識と経験を買った自治体が彼らをGIS構築プロデェクトの重要な幹部として起用し、一定の契約期間の雇用を保証するというものである。