(1) GISが導入されている主要業務
1] 固定資産管理業務
固定資産税管理業務は前出のアンケート結果でも778団体(24.4%)がGISを導入済みであるか、導入を検討されている業務であり、最もGISの利用が一般化している業務であると考えられている。
固定資産税管理業務には、売買や相続に伴い更新される土地や家屋などの課税客体の状況を正確に把握することが求められる。さらに、土地家屋現況図、公図、家屋図、地番図等、業務で利用される地図の種類が多い。このため、これらの図面と各種課税台帳との照合作業は非常に労力がかかる。
GISの導入事例では、大きくわけて次の2点における効果が報告されている。
・現況情報の整理・検索の効率化
・課税客体の現況情報の信頼性向上
まず、土地・家屋の現況管理の効率化についてであるが、地番図や家屋図での迅速な位置検索に活用されている。これは窓口における住民からの問い合わせの対応にも役立つものである。また、土地・家屋課税台帳等の照合作業も、固定資産台帳との連係により、画面上で行うことが出来る。さらに条件検索機能を利用し、地価上昇率の推移や同一条件地の確認にも利用されている。
次に、課税客体情報の信頼性の向上について述べる。従来は固定資産評価にあたって、間口、奥行距離および陰地割合の算出は、評価図面上でスケールをあてて測定し手計算で行っていた。このため誤って評価されることが少なくなかったが、GISの導入により、速く正確な算出が実現したとの効果が報告されている。実際、システムの導入動機に、詳細な家屋図の作成を行うことと、法務局の登記簿と税務課の課税台帳との整合性を保つ必要に迫られていたことを挙げている自治体も多い。
固定資産税管理システムでは、その精度を上げるために地番図、家屋図などの地理データの整備が非常に重要である。導入に成功している自治体のなかには、時間をかけて全域を調査し、法務局の公図よりも精度の高い地図を作成したところもある。また、固定資産管理システムは全国の市町村自治体でもっともGISが利用されている業務分野であり、複数の部署でGISを利用している自治体でも、固定資産管理システムからGISの導入を始めたというところは多い。