(b) 各種データ
本人に関する各種情報を記載しておき必要な際に出力することも行われている。最も普及しているのは本人に関する属性データのうち、健康管理情報、病歴情報等である。突然の発作、病気、災害時等非常時において本人を確認するとともに治療等に必要な情報を即座に検索、出力できるというわけである。
この種のデータを記載しておく場合、情報の保護対策が重要になる。ICカードがセキュリティ上有効なものであるとされ、これら個人情報が記載される例が多い所以である。ただし、セキュリティの強さはいざという場合の読み出しの困難さにつながるという問題にもなる。例えば、本人がパスワードを忘れた場合、ICカードに記載された情報は読み出せないことになる。また、本人が意識不明であるような場合にも、パスワードが入力できないため情報が読み出せないこととなる。非常時用にパスワードがなくても読み出せる方法を講じておくことも考えられるがその場合、誰がどのような状況において許されるかという問題に直面することとなる。また、読み取り装置等の標準化がなされていない場合も同様に記載情報が読めないこととなる。
(3) 責任分担
1枚のICカードに複数の情報が記載されていたり、複数のアプリケーションにアクセスできるような場合、アクセス権の切り分けという責任分担の問題がある。このアクセス権切り分けには、以下の二つの点がある。
1] カード保有者のリンク先等への制限
カードの保有者がアプリケーションにアクセスする範囲を設定・制限する場合である。何らかの方法によってカードの識別コードとパスワードが盗まれ、この1つのコードで複数のアプリケーションにアクセスできるような場合対象となっているアプリケーションすべてにアクセスできることとなる。リンク先のアクセス制限を個々に設定しておく必要があることとなるが、1つのパスワードでも忘れる可能性があるという問題が指摘される中で、アプリケーション毎の複数のパスワードを設定し、記憶しておくことを要求することは現実的でないであろう。