§4. 生物学的環境修復についての基礎知識
1. 生物学的環境修復の考え方
まず、言葉としての「生物学的環境修復」(Biological Remediation)を吟味すると、“生物学の知識・手法を用いて、汚染された環境を汚染前の環境に戻す”という意味での表現は正しいものと思えます。しかし、表現として何か具体性が欠けているように感じられます。今後、用語(一般用語、法律で規定される用語)として定着させるには、議論の上、広く認知されることを望むものであります。同じ意味に使われているものとしては、次のようなものがあります。
・ バイオレメディエーション(Bioremediation)
・ 微生物浄化
原意を広く解釈すると、
使う道具(生物A):対象となる汚染源(生物a、無生物b)
A VS. a-(1) A VS. b-(2)
のカテゴリーが考えられます。
更にAを微生物A1と非微生物A2に分けると、
A1 VS. a-(1)' A2 VS. a-(1)"
A1 VS. b-(2)' A2 VS. b-(2)"
の4つのカテゴリーが考えられます。
(1)'の例としては、悪臭を放つある昆虫が大量発生した際、この昆虫に特異的に致死性を持つ微生物を散布し、駆除する。
(1)"の例としては、大量の不快な節足動物が発生している地域を、この種の虫を好物とする小動物に捕食させる(天敵)。
(2)'の例としては、石油製品で汚染された地域を、石油をエサとして分解する細菌を用いて浄化する。
(2)"の例としては、糖分の濃原液で覆われた地面を、糖分が好物の小動物を動員して食べさせてしまう。
これらの例は、全て原意を満足させます。これらは広義の生物学的環境修復と言えます。この小冊子では、油濁対応の1つの選択肢として考えられる、生物学的環境修復(微生物浄化)を狭義の生物学的環境修復と捉え(上記の(2)')、述べてみます。