§2. 油濁対応の基礎知識
海域を航行する船舶が荒天による難破、他の船舶との衝突、座礁、その他の理由で積んでいる原油、石油製品、廃油等が海上に放出されることに起因する災害を油濁災害といいます。この他にも河川における希薄で肉眼では確認しにくい程度の油濁、陸上における工場など油を取扱っている場所等の土壌の油濁がありますが、一つの事故として発生する頻度、規模においては海上油濁と比較して小さいので、ここでは割愛します。
油濁事故が発生した場合にとられるあらゆる処置…通報、連絡、計画、防除作業、指揮、報告、広報、支援態勢等…をひとまとめにして“対応”(Response)といいます。
油濁対応(Oil Spill Response)はこのように“総合事業”なので、ただヤミクモに油をすくいとれば良いというものではありません。“どういう考え方で”、“どういう立場で”、“どういうことをして”、“どういう結果が得られるのか”を充分に知っておくことが肝要です。
1. 計画
油濁事故はいつ、どの位の規模のものが起こるかわかりません。事故が起こってから用意を始めたのでは、とうてい間に合いません。従って、日頃からどの程度の油濁事故にはどのような態勢で臨むかを緻密に検討、計画しておく必要があります。
現在の世界的な趨勢としては、“段階的な対応”(Tire Response)という考え方が一般的です。これは、油濁の規模を想定してその規模に応じ、対応する機関(資機材、人員)に即した対応を行おうというものです。
この段階的な油濁対応に関しては、ある“単位”を考えると理解が容易になります。ここでいう“単位”とは油濁防除を行うように組織された「指揮官、要員、資機器」等のかたまりをいいます。
水域に面して石油製品を扱う会社、組織等はこのような“単位”としての能力を持っています。この最小の“単位”で処置できる防除の対応を段階1対応といいます。
流出油の量が多くて一つの“単位”では対応ができなくなった場合には複数の“単位”で対応することになります。地域共同防災の考え方です。これが段階2対応です。
段階3対応は、油濁の規模や影響が大きいため、利用し得るすべての防除能力を集中する事態です。
最小の“単位”といってもその持つ能力には差があります。大きな製油所と小さな油槽所の能力(人員、資機材)を比べてみればよく判ります。