私にとってこの実習は、人体の構造を学ぶということもありましたが、自己を見つめ、自己を知るという体験を通じて、人間として少しではあるが、進歩することが出来たように思います。このような機会を与えて下さったご遺体とご家族の方のご厚志を無駄にすることのないように自分の道を一歩一歩進んでいこうと思います。
実習を終えて
桑原 未来
解剖実習が始まる前、私が一番感じていたのは、"恐怖"だった。亡くなっているとはいえ、人の体を切り刻むという恐怖。無事に実習を乗り越えていけるかという恐怖。あんなに医学生としての勉強がしたい、と教養のころは思っていたのに、いざ直前になると、心配でたまらなかった。
たった半年間のことだけれど、今は何年も前のことのような気がする。実際、実習を行って、終えて、今は"もう一度やりたい"という気持ちでいっぱいだ。いくつかのテストを繰り返していくうちに、どこに何があるかどうやれば傷つけずに目標の臓器・血管・神経を剖出できるかがさらによく理解できたからだ。ああすればよかった、あそこをもっともっと見ておけばよかった、と後悔しているところが多々ある。その時は全力を尽くしてやっているつもりだったのに。