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あの会合のあとに何も感じなかった人も、もしかしたらいるかも知れないけれど、私のように深く思うことがあった人が他にも必ずいるはずです。そういった意味でも、非常に意義のある機会を設けて下さったと思います。それまでは、解剖することについて、また御遺体について、あまり深く考えない方が良いと思っていましたが、今では、学生は献体について深く考え、理解した上で実習に取りかかるべきだと思います。ただ、あの会合の日、一日中いろいろと思い悩み、心がもやもやとしたまま翌日の解剖実習がやってきてしまったので、来年以降はもっと早い時期に、学生にこういった議題を投げかけ、じっくり考えさせる時間を与えてやった方が良いと思います。

 

解剖学実習を終えて

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四月から七月上旬にかけて、約三ヶ月もの長い期間、行われた解剖学実習が終わりました。時間的には長いようですが、いざ終えてみると、あっという間だったように感じます。

私達の御献体は、七十四歳のおばあさんでした。まず、最初に気付いたことは、おばあさんの左手薬指に指輪が光っていたことです。ほんの少し前まで、この方は、生きていて、泣いたり、笑ったりしながら、旦那さんに愛されて亡くなられた証のような気がしました。

 

 

 

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