日本財団 図書館


白菊会という団体があり、献体される方々がいらっしゃるという知識はありましたが、そこまで深く献体について考えたことはありませんでした。解剖実習の前日になってああいった機会を設けられ「献体」の大きさ、重大さを目のあたりにして大きなショックを受けました。御遺体にも生前は人格があり家族がいて、その方の死に涙した人がたくさんいるのだと思うと、大変胸が痛みました、副会長さんの子供さんのように、献体に反対されるご家族の方々もいるのです。副会長さんに教室の席の前の方が空いていることに対し、おしかりを受けましたが、失礼なことをしてしまった、と心から反省しました。そして、死を宣告されながらも前向きに、精力的に生きていらっしゃる副会長さんの生き様に対して大変な敬意を抱きました。その一方で、お話の最後で、「なぜ医師は献体をしないのか」という話題に触れられ、「献体をするお医者さんになって下さるよう願ってます。」との言葉でお話を終えられましたが、なんだか自分が責められているような気がして、胃が痛くなりました。「他人の体を使って解剖をするのだから、あなた自身の体も解剖実習のために提供するべきですよ。」と言われているような気がしました。私は献体をするかどうかわかりません。とても大きな問題です。会長さんが、副会長さんのお話のあとで、「解剖する側とされる側は、やはり違うでしょうから、お医者さんが必ずしも献体することはないと思います。」とコメントされ、いくらか気持ちが軽くなりました。しかし、少なからず私の心は傷つきました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION