中には亡くなった祖母のことを思い出したという者もおり、そういう風に親しみを覚えていったのでありました。
また、二体目の方には、臓器と間違えるほどの大きな腫瘍があり、その腫瘍の他の臓器への圧迫の様子には大変にショックを受けました。痛みに対するケアはされていたに違いありませんが、それも効かない程の痛みがあったのではないかと思うと同時に、患者さんの痛みを取り除くことの大切さを身をもって知らされました。
献体してくださった方々、そして故人の気持ちを尊重してくださった遺族の方々、このような貴重な経験をさせていただいたことを心から感謝しています。本当に有り難うございました。
医師になるための試練
西 賢一郎
この学校を受験する時から、一年生の後期は人体解剖の実習があるということは知っており、また、自分自身にとっても「一年生から医学的なことができる」と期待に胸いっぱいであった。とは言っても多少の不安を抱きながら、私はこの実習に臨んだ。
いざ実際に御遺体を目の前にすると、やはり言葉にもならない、なんとも厳かな気分になる。「これからいよいよ医師としての第一歩を踏み出すんだ」と思うと、正直言って恐ろしいものがあった。