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最初は全てにためらい、しかし実習内容に遅れをとらないよう、ただ無我夢中に努力を続ける毎日でした。私達は、解剖学実習が始まり何ヶ月かがたとうとしていた頃も、決して慣れることはありませんでした。それは、厳しい実習内容もそうですが、御遺体についてもです。ある方はおっしゃっていました。「そのうち慣れる」と。でも私達は違いました。そして私達は正しかったと思います。医師を志すものにとって御遺体に…死に…慣れるということが良いことだとは思いません。将来患者さんの死を目前にして涙も出ない、そんな医師にはなりたくありません。人の死、そして、それ以前に、患者さん自身をもっと大きく受けとめられる医師になりたい、解剖学実習でこういう自分達の目標のようなものを学びとりました。さらに、このような実習が無事に行えるのは爽風会の会員の皆様をはじめその他大勢の方々のご協力のおかげであること、また、この医学部における勉強が自分達のための勉強ではなく、そういった多くの方々、そして私達が将来助ける患者さんのための勉強であることを学びつつ、一生懸命実習に取り組みました。

これからさらに専門へと進むわけですが、この解剖学実習から得たことを決して忘れることなく、人々に望まれる医師を目指し精一杯勉学に励んでいきます。このような貴重な体験にご協力くださった方々に深く感謝し、御冥福をお祈りいたします。

 

 

 

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