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自覚

白谷 徹

五月、この大学に入って始めて、解剖実習という特殊な実習が開始された月です。私が一年生の時、想像もできなかった分野です。初めて解剖実習室に入ったときのあの雰囲気は何か重いものがありました。人生において初めて会うご遺体を前に、私は大きな責任感を感じ、また自分は医師になるんだということを改めて自覚させられました。この実習を通し、教わったことは、解剖というのは医師になるために絶対必要な学問であり、医師という職業がどれだけ重く、大事なものか、また、その医師になることを自覚させるものであることです。

四月から解剖学を学んできたのですが、実習が始まる前までは、一度も見たことのない人間の体の構造をはっきりとイメージすることはできませんでした。それはいくら先生方から教わったり、図を見たりしても難しいものです。それを最も簡単に、かつ早く理解させてくれるのが解剖実習でした。実際、実習を行うに従って得た知識は解剖学で学んだ知識よりも身についたと思います。一回一回の実習は確かに辛く、大変なものでした。

 

 

 

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