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講義や書物からでは学び取れない部分や、私は自分の目で確かめないと理解出来ない性格なので解剖を進めるにつれ、今までの解剖学の講義や、その他の講義との関連付けが出来、さらに理解を深めることが出来ました。

解剖学実習を行うまで、歯科大に在籍しながらも人体に対する不明な点が多数あり、このままで良いのであろうかと感じていましたが、三年生になりご遺体を解剖させていただき、ようやく人体の構造が明らかになりました。また、実習を進める上でのポイントと並び、書物などからでは判らない触覚にも私は重点を置きました。これは、動脈、静脈や神経またその他の臓器に対して、これから医療行為をする者に非常に重要なことであると感じていたからです。

私は献体して下さったご遺体に対して、礼儀を尽くす為に剖出を非常に丹念にしました、そして腋窩や頸部の血管および神経の入り込んだ所には非常に驚嘆し、これらは神のなす業であると感じました。人体は非常に複雑であり、非常に繊細であると実感しました。

これから歯学を学ぶに当たり、解剖学で学んだことはいつまでも基礎となるでしょう。また、五年生になってからの頭頸部解剖でもご遺体解剖させて頂きますが、その時も今年行った解剖の作業を脳裏に浮かべながら実習していきたいと思います。

最後になりましたが、献体して下さった御遺体、またその御家族には、私の知識の源を与えて頂いた機会を非常に感謝しています。

この三年生で行った解剖実習は、一生忘れることはないでしょう。そして私が臨床に入った時に必ず有効になるでしょう。

私に人体の驚異と、構造を教えて頂いた御遺体には感謝の念が絶えません。本当に有り難う御座いました。

 

 

 

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