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解剖学実習の恵み

角谷 知泰

『わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない。』(ヨハネによる福音書十五章十二節〜十三節)

これは、解剖学実習初日に解剖させていただく御遺体を目の当たりにして、ふと思い出された聖句でした。このときから既に、御遺体が私たちにいろいろなことを教え始めて下さっていたと思いました。

私たちは解剖学実習を行うまで、神経や血管の走行、臓器の形態などを講義で聴いたり、教科書を見たりして勉強していました。しかし、それは単なる平面上の知識の羅列でしかありませんでした。解剖学実習を行うにつれて、それらの知識が立体的に組み合われて、真の知識となり身に付いてきました。これは、実際の解剖なしでは得ることのできないことであり、御遺体から賜った"生きた知識"でありました。

さらに、御遺体から賜った偉大なものがありました。それは"心の栄養"であり、私たちに最も必要なものでありました。

 

 

 

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