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反省すべき点もある。残念ながら生命の尊厳について十分に考えることができたと言いきることができない。確かに御遺体に対して感謝の気持ちを忘れたことはないし、常に細心の注意を払って御遺体に接したつもりだった。だが実習に集中するあまり御遺体を物のように見てしまったことは否めなく、それが申し訳なく自己嫌悪に陥ることもしぱしばだった。冷静に物事に対処することは大切だが、常に忘れてはいけないことがあるということに気付かされた。

将来、僕は医師になり多くの人と向かい合うだろう。いくつになっても、今回感じた責任感や、献体して下さった方の気持ちを無にしないという思いを大切に持ち続けていきたい。実習を最後までやり抜くことができたのは辛い時に励ましあい、協力してきた仲間、優しく、時には厳しく御指導下さった先生方、そして何より人体解剖を学ぶ機会を与えて下さった御献体と御遺族の方々のおかげである。心から献体して下さった方々、御遺族の方々に感謝をしたい。

 

 

 

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