日本財団 図書館


最後になりましたが、御献体してくださった故人の方々、並びに御献体されることに賛同してくださった御遺族の方々に心からの敬意と感謝の言葉を述べたいと思います。本当にありがとうございました。御冥福をお祈り致します。

 

解剖学実習を終えて

坂田 道教

解剖実習を始めるまで、実習のことを考えたことがなかった。無理に意識しないようにしていたのかもしれない。はっきり言ってやりたくなかった。先輩達から実習の大変さを聞かされていたし、自分に出来るのかという不安や、人体を解剖するということへの嫌悪感も多いに感じていた。いざ実習が始まると、そんな気持ちは全く吹き飛んだ。やらなければいけない、やらなければ申し訳ないという使命感でいっぱいだった。今思うと考える余裕もなかった。普段の授業にほぼ毎日の実習のため、実習時間内に終わらないのが当たり前で、遅くまで残っていたり、休日を利用したりもした。自分の時間などなかった。このように実習中心の生活を送っていたのだから肉体的にも精神的にもかなりまいっていた。しかし、同時に充実した日々でもあった。それは人体の精巧さへの驚きの連続だった。また百聞は一見にしかずとはよく言ったもので教科書を読んだだけでは得られない知識を得ることができたし、印象に強く残るため、今なお鮮明に記憶されている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION