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解剖学実習を終えて

真島 洋子

解剖学実習は二年生の冬に始まりました。初めて御遺体と対面し、メスを入れた時のことを今でも鮮明に覚えています。一年半前に亡くなった私の祖父が気管切開をしていた為、そのときはどうしても頸部の皮膚切開はできませんでした。私の班の御遺体が"おじいちゃん"であり、祖父と重なってみえたのです。しかし、その後は見るものすべてが新しく、人体の精巧さにただ感動するばかりでした。どれも興味深く、時間の許す限り観察していた気がします。平面的な教科書の絵とは違って、人体を立体的に眺めることはとてもわかりやすく、印象深いものだと実感しました。まさに"百聞は一見にしかず"でした。睡眠不足や実習時間の長さから、かなり体力的につらい所もありましたが、実習に集中しているときは不思議と疲れを感じませんでした。臓器の位置関係や大きさ、個体差や異常なども学びました。これらのことは後の勉強にとても役立ちました。もし解剖学実習がなかったらどうなっただろうかと考えると恐ろしく、あらためてこの実習の大切さを感じました。そして私たちが解剖学実習を行うことができるのも自らの御意志で御献体くださった方々のおかげであり、それを忘れず、また、充分お応えすることができるようにこの実習で得た貴重な体験をいかしてさらに学び、吸収していきたいと思います。

 

 

 

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