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解剖学実習の感想

松本 剛

医学部に入学して丸二年が経ち、その時期を解剖学実習で過ごした。まだ、教養時代からの習慣が抜け切れていないままの最初の授業の時は、いよいよ人体解剖が始まるという緊張感はありながらも、これから行なうことへの責任感は希薄だったと思う。しかし、ビニールシートに包まれた御遺体を目の前にして、これまでに感じたことのない使命感を持ったことも事実である。

そういった、使命感を持ちながらも、解剖実習自体について、私個人として満足にできたかと問われたら、それは「NO」と言わざるを得ない、特にこの学期は並行して行われていた生理学実習も大変でどっちつかずになってしまった感もある。授業中にとった怠惰な行為に対しては、今、御遺体に対して非常に失礼なことをしたと自己嫌悪に陥ることもある。しかし、この反省の気持ちはこれからの医学への前向きな態度で償おうとも思っている。

解剖学実習は、医学部の授業の中でもその意義を最も実感できる授業であった。それはおそらく、自分たちだけでできる勉強ではないからだと思う。

 

 

 

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