こう実感した時、私は思慮の浅かった自分を反省すると同時に、私たちの責任の大きさを実感した。
だから、献体をなさった方への恩返しは、解剖学実習中ではなく、むしろ私たちが卒業後医師として社会に出て初めてなされるのだろう。そう思う今、解剖学実習だけでなく今後も同じ気持ちで医学の道に精進しなくてはいけないと痛感している。
解剖学実習を終えて
塚本 和久
今年一月から始まった解剖学実習が、この夏をもって終了した。長い道のりであった、というのが正直な感慨である。丹念に人体のしくみと機能をくまなく理解することを目的としてずっと進みつづけてきた道のりのなんと長かったことか!同時に、この長い道のりを通して、本の上だけでなく、実際に自分自身がこの目で見、この手で触り、そして理解を深めたのだ、という大いなる喜びと、またそのために自ら進んで身体を提供してくださった献体者の方々への深い感謝と畏敬の念を心から感じている。
しかし、もちろん一月からの実習が、全て満点で進んでいったとはとてもいえないのは事実である。まじめに取り組んでいてもやはり知識の取りこぼしはあったし、また気持ちの上でも何度もくじけそうになったこともあった。