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最近、新聞でアメリカの医師、看護婦ら約五十人が、AIDSウィルスを弱めたAIDSワクチンの効果を調べるための実験に自ら志願したと記されていた。この医師、看護婦達と同じように、医学の発展のために献体された故人と御遺族の方に深く感謝し、故人の御冥福を心よりお祈りいたします。

 

人体解剖を通して感じたこと

渡辺 知愛子

「人体解剖」、この言葉はある意味私にとって憧れでもあった。それは「医大生らしい」というただそれだけの軽い気持ちから来るものであった。しかし初めて解剖室の扉を開けて白いカバーで覆われた何体ものご遺体を目にした時、私はその異様な光景に思わず息をのんだ。そして献体して下さった方々のためにも、しっかりと学ばせていただかねば、と思った。

まずは皮剥ぎから始まり、脂肪組織を取り除き見えにくかった血管や、神経、筋肉を浮き出させる。何もかも初めてのことで班員の顔が皆心なしかこわばっていた。しかしそれも徐々に薄れ、メスやピンセットを動かす手が慣れてきた。脂肪ひとつにしても、ご遺体によって様々であることが分かった。また脂肪は体中どこにでもあった。筋肉の中にまであり、どうりで脂肪を減らすのが難しいわけだ、と一人で納得してみたりした。

 

 

 

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