解剖学実習を終えて
三宅 梨恵
二年生の後期十二月から始まった解剖学実習であったが、実習直前までは不安な気持ちでいっぱいであった。学ぶ為だということは分かっているのだが、最初はどうしても戸惑いを隠す事はできなかったように思う。皮膚にメスを入れることすら拒んでしまいそうになった事をよく覚えている。しかし、献体をして下さった方々の事を考えるとその時の自分が今では恥かしく思えてならないのである。
皮むきから始まり、剖出が進むにつれて、体の中を走行している脈管や神経の複雑な事を改めて認識させられた。個体によって異なっている部分も多く、理解するのに時間がかかった事は、度々あったように思う。また、なかなか剖出できなかったり、剖出に失敗したりととても苦労した事もしばしばあった。しかし、教科書だけではあまりにも平面的すぎて理解のできなかった部分、例えば下顎神経の分枝している神経や、眼窩の周囲の筋肉、神経など実際に目にしてみて初めて理解できたように思う。
人体解剖実習は、歯学生か医学生しか行うことはできず今後の医療の発展のためにも体の各部の構造を十分に理解するにあたって、なくてはならないものである。教科書や図説も単なる想像上のものでしかなかったものが、実習を通してはじめて理解できるようになったと思っている。
献体をしてくださった方々と、その御遺族の方々に感謝の気持ちでいっぱいである。