そう、私がとまどったのは、生者が死者に花を贈る思い上りのようなものが恥ずかしかったからなのだ。古来、通夜･葬式等の儀式は、残されたものに対してのものだった。死者を悼みながら人々は己の順番が未だ来ないことでささやかな安心を感じる。そんな滑稽さを自分に対して感じたからなのだ。
だが、彼は私に教えてくれた。人間の意志の尊厳の持つ力を。肉体は滅びても、彼の意志は、残り、そして伝えられるのだ、と。
最後に医学教育の為に献体して下さった全ての方々、及び御家族の方々に心よりの感謝の気持ちを捧げます。有り難う御座いました。
解剖学実習を終えて
島田 斉
二月半もの長い間にわたり取り組んできた解剖学実習。実習を通して多くの事を学びまた考えさせられたが、実習を振り返るにあたってまず、はじめに解剖をした日のことから報告しなければならないと思う。
初日の実習を終えた夜、私はひどく高ぶった気分でいた。何がそんなにも私の気分を高ぶらせていたのだろう。初めてご遺体を見たことか?それともそのご遺体を自らが｢解剖｣したことか?いや、そうではない。ご遺体に対面する時の私は驚くほど冷静であったし、
