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また、ご遺体に触れ得た経験は、解剖学のみならず、病理学や生理学、そしてミクロ的なものへと、私達の興味を誘ってくれました。学問をより追及していくことが、私達自身にかかっていることはもちろんですが、ご遺体は永遠に私達の中で共に生き続けるはずです。

人間には、確実に「死」が訪れます。しかし「死」がそのまま「無」を意味するのではないことを、私は直接ご遺体から学びました。医学生として「医学」や「医療」を考えるとき「死」に対して立ち向かうことをおそれてはならないと思います。

ご自分のお体を、私達医学生のために提供してくれた故人には、深い感謝を捧げます。様々な教育を施して下さって本当にありがとうございました。自分の持ち得る力の限り、良い医者となれるよう、努力致します。献体して下さった方の御冥福を心より御祈り申し上げます。

 

解剖学実習を終えて

竹本 浩子

医学部の実習の中でも、一番強く自分が医学を志している者である事を自覚させられるものが解剖学実習であると思います。今日、医学の進歩は目覚ましく、それとともに多様化、専門化しています。したがって6年間という限られた時間の中で膨大な量の知識を得る必要があります。そしてまた、その内容も次第に淘汰されていっています。

 

 

 

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