私達は、多くの人々の力に支えられて医師となるのです。この貴重な体験を生かして、これらの人々の気持ちに答えるべく努力し、立派な医師になりたいと思います。最後に、献体して下さった方々と御遺族に厚く感謝するとともに、御冥福を御祈りいたします。
解剖学実習を終えて
安田 和世
多くの人の経験することではありますが、幼少期の頃、親や妹が明日いなくなったらどうしようと、怖くなって眠れなくなったことがあります。高校時代には、祖父の死を受容できずに、足が固まって、長い間お墓に行くことができませんでした。私にとって死は恐怖でした。今回、解剖を行うにあたり、私は常にノートに、亡き祖父の写真をはさんで、ご遺体にのぞみました。自分一人では、死んだ方を前にする勇気がありませんでした。日を追う度に、ご遺体のお顔が、祖父の面影と重なるのを感じました。
ご遺体は、私達に対して終始無言でしたが、そのお体や病巣は、私達に多くを語ってくれました。そして今、体の部位一つ一つを思う時、必ず、メスを入れさせていただいたご遺体が頭に浮かび、映像がフラッシュバックします。その時、傲慢ではありますが、その方のお気持ちが私達の中に再び生きていることを感じます。