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今、この解剖学実習を振り返ると、解剖の知識はまだ不十分であるかも知れないが、医師になることの責任を自覚することができたと思う。それと同時に、非日常的な"死"というものに数ヶ月間向き合ったことは、以前、私自身が抱いていた死に対する考え方とは違った角度から、それを捉えることを可能にしてくれた。このような貴重な体験から学んだことを決して忘れず、いつも心においてこれから歩んでゆきたい。最後に、御遺体と御遺族の方々、そしてご指導して下さった先生方に、心から感謝すると共に、献体なされた方の御冥福をお祈り申し上げます。

 

解剖を通して

平野 雅子

半年間の解剖実習の間、私がいつも感じていたことは、献体なさって下さった方々、そしてその御家族の方々のやさしさです。二一世紀のためとか、未来の子供達のためなどいろいろ叫ばれている昨今、それを本当に実践できている人は少ないと思います、そんな中で、自分の体を知らない誰かのために差し出すということは、自分本位で生きている人には絶対できないことだと思います。現代の医療の高度の発展は、そういうやさしさを併せ持った方々に支えられています。結局"人を救う"源は"人のやさしさ"なのだな、と実感できました。

 

 

 

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