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マストのぶつかりそうな状況の中、1219一人目の潜水士はホイストマンとの高度な連携で該船に降下しましたが、その状況では二人目の潜水士及び担架(ワイヤーストレッチャー)の吊降ろし並びに患者の収容は危険と判断し、一旦作業を中断して、該船の右舷側から風を受けながら微速で航行した状態で作業することにしました。

その状態に設定したところ、幾分状況がよくなったので作業を再開し、1238なんとか二人目の潜水士と担架を吊降ろすことが出来ました。

潜水士2名は、激しい動揺の中、船室にいた患者を狭い船内外を通って迅速に船首部の吊り上げ位置まで運びましたが、船体は相変わらず上下左右に大きく動いており、吊り上げ作業はかなり手間取ることが予想されました。

患者の容態を考えると一刻も早く病院に搬送する必要があったので、潜水士2名は該船に残し、後ほど到着する巡視船「やひこ」で収容することとし、患者の吊り上げ作業にかかり、1300大きく揺れる該船上から、潜水士によるガイドロープ操作による補助を受けて、患者を機内に収容しました。

直ちに、小野先生による診察と手当てが行われ、本機は新潟中央病院に隣接する新潟県庁ヘリポートに向かいましたが、途中、小野先生からは患者の状態や病院に対する指示がてきぱきと発せられ、非常に頼もしく感じられました。帰路はヘリポートまで約70海里ありましたが、新型機の高速性により約30分で到着し、患者は待機していた救急車に医師、看護婦に付き添われ引き継がれました。診断の結果、患者は左小脳出血とのことでした。

今回は、新型機による始めての洋上救急で、かつ、かなり困難な出動事例となりましたが、新しい機体は予想以上の性能を発揮しました。

吊り上げ作業に思いのほか時間がかかりましたが、それにも十分対処できましたし、機体の振動が少ないので機内での医療処置がしやすくなったと思います。

また、新型機の速度が従来機の約1.5倍になったことにより、その行動半径が伸び、また、吊り上げ後はより迅速に病院へ搬送できることと思います。

今後、日本海で洋上救急事案が発生したときは、この機体で駈けつけますので期待していて下さい。

 

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患者の救急車への引き継ぎ(新潟県庁ヘリポートにて)

 

 

 

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