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ヘリコプターによる洋上救急を実施する場合の考慮すべき重要な事項を説明しますと

 

1] 患者の容態を出来る限り正確に把握する。

容態により医師搭載の必要性や降下させる海上保安官の人数、吊り上げに使用する機材等を考えなければなりません。

 

2] 機体重量、進出距離、現場での作業時間の組み合わせが大切である。

ヘリコプターはいつでもホバリング出来るわけでなく、ある重量以下でないと実施出来ません。従って、出動に際しては、必要な搭乗者、進出距離、現場での作業時間、気象状況等をよく考えたうえで、搭載燃料と搭載人員を決める必要があります。

 

3] 吊り上げ場所の選定が難しい。

理想的な吊り上げ場所としては、風上に向かって航走している船舶の後部(パイロットが船舶を視認し続けられる)で障害物のない広い場所ですが、そのような場所を設定できないケースが多いので、相手船との十分な打ち合わせが必要となります。

 

4] 現場での相手船との確実な連絡手段を確保する。

刻々と変化する状況のなかで、速やかに作業を行うには確実な通信手段が不可欠です。場合によっては、通信機を最初に相手船に渡す場合もあります。

今回の場合は、判明している病状から新潟中央病院脳外科の医師(小野先生)と看護婦(飯塚さん)がヘリコプターに搭乗することになり、また、患者の意識が殆どないこと、及び漁具が多く吊り上げ場所が船首部の極めて狭い場所しか確保出来ないことから、巡視船「やひこ」の潜水士2名が降下して吊り上げ作業を実施することになりました。

出発前に、第八日乃出丸と吊り上げ方法等について船舶電話で打ち合わせを実施し、MH904(らいちょう2号)が1110新潟空港を離陸しました。

当日の気象は、冬型の気圧配置で所々に雨の区域があり、北の風が強い状態でした。

途中、両津湾にて現場向け急行中の巡視船「やひこ」から潜水士2名を吊り上げ、1214新潟空港から約70海里の地点で該船と会合しました。

現場付近は雨こそ降っていませんでしたが、北の風約25ノット、波高約2メートルでした。事前の検討どおり該船上には吊り上げ可能な場所が船首部にしかなく、そこさえ担架を横に置くのがやっとの広さで、そのすぐ後ろには集魚灯のワイヤーが繁がっているマストがあるという状況でした。

第八日乃出丸は本機と会合すると事前の打ち合わせのようり風を右舷側から受け停船状態としましたが、風とうねりのため木の葉のように揺れていました。かなり難しい作業になるとは予測していましたが、該船の状況を見るとホバリング安定性が優れた新型機でも苦労しそうに感じられました。

ホイストマンの誘導により該船船首部に進入し、ダウンウォッシュの影響を少なく、該船をパイロット席から視認できる最良の高度(約80フィート)でホバリングを行い、潜水士の吊降ろし作業を開始したが、該船は動揺により上下左右に激しく動きまわり、また、船首方向もダウンウォッシュの影響により徐々に変化していく状態でした。

 

 

 

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