日本財団 図書館


しかし、その祈りも届かなかった。心肺蘇生法を開始して約3時間が経過した15時15分、呼吸、脈拍ともになく、下顎に死後硬直が現れている等とのことから、死亡を確認した。金華山東方約960海里の位置であった。

今回のK丸のKさんとY丸のMさんは同じ50歳であった。また、K丸とY丸はほぼ同じ海域において操業していたが、結果は明と暗に別れた。それが運命だったのだと言ってしまえばそれまでであるが、「運命」の一言で済ませてしまうにはやはり何かやるせないものを感じてしまう。

今回の洋上救急において出動していただいた医師・看護婦の方々には心から感謝申し上げます。この洋上救急制度は医療過疎の地域「海」で働くすべての人の心の支えとなっていると思います。全国の洋上救急協力病院また洋上救急支援協議会をはじめてとした関係者の皆様には今後ともよろしくお願い申し上げます。

そして最後に「ざおう」乗組員一同、Mさんのご家族、関係者の皆様にお悔やみを申し上げ、Mさんのご冥福を心よりお祈りいたします。

 

洋上救急出動事例 No.2

 

新配属ヘリによる洋上救急初出動

第九管区海上保安本部 新潟航空基地

飛行士 大橋 功

 

第九管区海上保安本部新潟航空基地は新潟空港にあり、ヘリコプター2機は、新潟県、富山県、石川県の沖合海域から山形県、秋田県及び青森県沖合の中部日本海を担当しています。

昨年10月に、これまでのベル式212型ヘリコプター2機が、待望の最新鋭ヘリコプター、シコルスキー式S76C型2機に代替えされました。

導入後の各種訓練が一段落した12月上旬、当基地新型ヘリコプターによる始めての洋上救急に出動しましたので、その事例について紹介します。

12月6日、九管区本部から当基地に対し「新潟の北北西約90海里の第八日乃出丸(イカ釣漁船19トン、乗員2名)に病人が発生しているので、新潟中央病院の医師と看護婦を搭乗させたうえ、該船に急行し、病人の吊り上げ及び搬送を実施せよ。」との指令がありました。

病人は61歳の男性で、当日の朝、頭が痛いと訴え横になった後、呼びかけても返事がない状態であるとのことでした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION