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活動の理念に向って

理事長 土方 浩

 

海難という極めて即時性の高い災害に対する手立ては、一刻を争う救助作業以外にない。

特に、海上生活に不慣れな人々による海洋レジャー活動においては、その対応の迅速性が求められる。

従来から、海難救助のうち、特に人命救助に対してはいわゆる人類愛にもとづく活動として無償を原則としているが、原則論を盾にして置くだけでは価値感の変遷等の時代の変様の中で、その永続性は期待できない。

そこで、これ等の行為をする人々を社会的に報奨し、定着させて行く活動は海という自然への対応にとって必要不可欠のものであると考える。

この活動の担い手が水救会であり、これ等事業を資金面から支えて戴いているのは日本財団、日本海事財団であり両財団に対しては万腔の敬意と感謝の念を表わしたい。

しかしながら両財団とも現在の経済状況下、その出資の条件も厳しい環境下にあり、われわれ白身さらに組織運営のより効率化を講じてゆく必要がある。

具体的には社団法人として会員の参加を促す活動をさらに積極的に進め、これによって安定した基盤の確保を図り、特に地方組織及びその傘下の救難所の活性化は運営資金面の影響をまともに受ける傾向にあるので、地方自治体、関係団体の支援の要請を展開すると共に、自らも所轄の関係機関の指導協力を戴き、青い羽根募金の積極的な展開、公益増進法人としてのメリットを生かした寄附金の募集等の自助努力の絶え間のない継続が必要である。

中央としても、地方組織のより活発な運営のためにも任意加入の災害共済において、救難所単位での活動助成の形で還付配当制度を実施することとした。

ところで、地方組織の編成に当っては、地域のニーズに弾力的に対応できる形の各種海難救助のボランティア団体の中核的存在を指向しており、この場合公的機関からの海洋に関する各種ボランティア活動の要請や受託事業の機会も増えることが予想され、また地方自治体や関係団体からの支援の受け皿となることから、その運営の透明性、健全性を担保する公益法人化を進めて戴きたい。

幸い昨年末、特定非営利活動促進法(NP0法)が制定され、その法人化要件が従来の民法法人に比較して軽減化されたので、関係機関の御指導により、その立ち上がりを図られたい。

いずれにしろ、不況下の重苦しい空気のもとではあるが、当会事業の健全発展を次代への継続のためにも、積極的対応が求められていることを踏まえ、中央も懸命の努力を傾注する所存でありますので、関係機関、団体の皆様には宜敷しく御指導、御協力を賜わりたくお願い申し上げます。

 

 

 

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