しかし、それ以外の環境関係法上の同種罰則については、法の趣旨は、生活環境の保全、海洋環境の保全とほぼ同一である。法の趣旨がほぼ同一である限り、法定刑に著しい差異が生じる場合には、その具体的根拠を明示しなければ、すでに指摘したように、罪刑の均衡原則に抵触するおそれがないとはいえない10。また、憲法違反とはいえない程の刑罰の格差であっても、同程度の刑罰が望ましく、さらに法益間のランク付けと刑の軽重の間にも矛盾が生じないように配慮する必要がある。
国内の環境規制が多種の環境関係法令の運用により実施されている現状では、法改正の度に以上のような問題に常に直面することになる。この問題を解消するためには、本来的には、現行の各種環境関連法に散在する罰則規定を、統一的な視点から、同種の事態を平等に扱うべく環境犯罪に関する規定をまとめて刑法の中に組み入れるか、新たに法典化する方法がある11。もっとも、これには現行の環境法体系や刑法の大幅見直しが要求されるため、大変な作業になるので、さしあたっての現実的な解決策として指摘し得るのは、現行法制度上環境規制法が各種個別に存在する状況を前提にする限り、各法の改正時には他の類似法令上の罰則の見直しも含めて相互のバランスの調整を図るとともに、罰金刑については時代に適合する額であるか否か、現行刑罰の抑止力・感銘力が著しく低いものにとどまっていないかの検討も併せて行う必要があることに留意して改正を行うということである12。
10 同種犯罪の罪刑不均衡の問題につき、銃砲刀剣類所持等取締法の重罰化との関連で論じたものとして、足立昌勝「銃刀法の重罰化と罪刑の均衡」法学新法103巻4・5号69頁以下(1997)。
11 ドイツでは、1980年の改正で刑法典の中に環境に対する犯罪行為を取り入れた。ドイツ環境刑法については、山中敬一「ドイツ環境刑法の理論と構造」関西大学法学論集41巻3号450頁以下(1991)など参照。
12 日本の刑罰法規の多くが罰金額の改正を放置していることの問題点を指摘するとともに、改革案を提示するのは、青木正良「罰金額の変遷」立教法学49号167頁以下(1998)。