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の関係諸利益又は領海内若しくは排他的経済水域内の資源に汚染行為がもたらす影響等、侵害法益の違いを中心に考慮しながら海洋汚染の程度の差異を考え、他法令とのバランスも考慮しつつ、細分化された個別規定を設けることも検討される必要があろう。

(2) 環境関係法令間の罰則規定のばらつき

海防法が自由刑を廃止したこと及び罰金額を引き上げたことに伴い生じた問題として、他の環境規制法との関係で同種違反行為に対する刑罰にばらつきが出た点も挙げられる。もっとも、現時点においては、海防法のみによってこの問題が顕在化しているわけではない。平成9年時に廃掃法上の罰則規定が強化されたこともあって、ますます環境規制法間における排出規制違反行為に対する罰則規定刑の軽重の差は大きくなっている。

一般に、同程度の法益侵害又は法益侵害の危険を発生させる同種の犯罪であるにもかかわらず、刑罰の種類・重さに著しいばらつきがある場合には、憲法第31条が保障した法律の実質的適性を担保する罪刑均衡の原則に抵触する可能性が問われる。また、憲法違反とまではいえない程の著しい不均衡ではなくても、立法にあたっては同種違反行為につき、特別の理由がなければ、同等の刑罰を科すのが望ましいことは指摘するまでもないであろう。この点は、勿論環境事犯としての排出違反行為にも当てはまる。

排出規制違反行為につき、海防法における排出禁止違反については、改正前は、上述の如く、故意による違法排出については6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、過失による場合には3月以下の禁錮又は30万円以下の罰金を規定していた。また、廃掃法による廃棄物の投棄禁止違反に関しては、平成9年度の改正前までは、故意による投棄禁止違反については、特別管理一般廃棄物、特別管理産業廃棄物その他政令で定める産業廃棄物の不法投棄に対しては、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、それ以外の廃棄物の不法投棄に対しては6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が法定刑として定められていた。他方、水質汚濁防止法(以下、水濁法と略す。)には、特定事業場からの排出基準に適合しない排出水の公共用水域への排出行為に対しては、故意による場合は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、過失による場合は3月以下の禁錮又は30万円以下の罰金が法定刑として定められていた。

 

 

 

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