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3. 罰則規定改正の問題点

 

しかしながら、このような改正を行った結果生じた問題として、以下のような点が指摘し得るように思われる。

(1) 自由刑の廃止

(イ) 自国船舶に対する自由刑の廃止

まず、完全に自由刑を廃止して一律罰金刑にした点に係る問題から取り上げたい。

そもそも船舶からの汚染については、国連海洋法条約第211条第2項が、「いずれの国も、自国を旗国とし又は自国において登録された船舶からの海洋汚染を防止し、軽減し及び規制するための法令を制定する。この法令は、権限のある国際機関又は一般的な外交会議を通じて定められる一般的に受け入れられている国際的な規則及び基準と少なくとも同等の効果を有するものとする」として、自国船舶の汚染行為につき、旗国による規制が国際法的な規制以上のものであることを求め、さらに、船舶からの海洋汚染に対する旗国による執行として、第217条第8項が、「国の法令が自国を旗国とする船舶に対して定める罰は、場所のいかんを問わず違反を防止するため十分に厳格なものとする」と規定している。

つまり、国連海洋法条約では、沿岸国、寄港国に一定の権限を認めつつも、領海外での外国船舶による船舶からの汚染につき、公海自由の原則に基づく船舶航行利益との関係上、旗国による執行をなお優先させ、それゆえ沿岸国は損害を被っても領海外における外国船舶によるものであれば罰金刑しか科すことができず、また執行権能、刑事手続上の制限も付す(第220条、第228条7)一方で、国際社会共通の利益である海洋環境保全の重要性を考慮した旗国の果たすべき役割の重さから、自国船舶に対しては旗国の厳しい規制を要請しているものと考えられる。旗国主義を優先しつつ、国際社会共通の利益である海洋環境の保護も図るという場合には、旗国が厳しい態度に出ることが必要不可欠でありかつ効果的な手段であるという建前に基づくものである。

7 外国船舶による汚染の場合には、1]違反が領海内で行われた場合、2]沿岸国が著しい損害を負う場合、3]旗国が繰り返し違反行為を黙認した場合以外は、旗国の罰を科するためにとる手続きが沿岸国のそれよりも優先される(国連海洋法条約第228条第1項)。

 

 

 

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