日本財団 図書館


に基づく責任(liability)とを規定しており、同条2項は、自国の法制度にしたがって、救済のための手段が利用しうることを確保する(ensure)義務を規定している。これらの規定については、本稿の検討対象としている232条とは、想定される状況が異なっている。その他、国連海洋法条約第15部は紛争解決に関する条文群であるが、その中で295条は、国内救済を尽くす義務について規定している。

(5) この問題は、232条の想定する適用対象問題に関わるが、この点については次に検討する。

(6) 国際法における権利濫用原則については、たとえば、名島芳「国際法における権利濫用」(1996年)、臼杵知史『国際法における権利濫用の成立態様』北大法学論集第31巻第1号、39頁以下、第31巻、第2号、201頁以下、G.D.S.Taylor, ”The Content of the Rule Against Abuse of Right in International Law,”BRITISH YEAR BOOK OF INTERNATIONAL LAW, 1972─1973, p.323 et seq.

(7) 臼杵前掲、84頁以下。

(8) たとえば、アゴーは、権利濫用原則と国際違法行為を要件とする国家責任法との関係について、国際法では、「権利を濫用という態様で行使してはならない」という原則が確立しており、権利の濫用は、かかる原則の違反であり、したがって、義務違反の一形態として国際違法行為に吸収されるとしている。特別報告者アゴーの、国連国際法委員会における第二報告書、YEARBOOK OF THE INTERNATIONAL LAW COMMISSION, 1970, Vol.II, p.193, アゴーは、それ以前の著作でも、国際法上、権利濫用を禁止する原則が確立しているかについては留保しながら、同様の見解をのべている、Robert Ago, ”Le de'lit international,” Rucueil des cours, 1939─II, pp.442─445. ルテールは、国家責任法は、「合法性」の観念に対して、一定の自立性(autonomie)を有しており、具体的な状況や場合において、合法性判断の基準を補完する機能を内在させているとして、その一つの例として、権利濫用原則をあげている、Paul Reuter, LE DEVELOPPEMENT DE L'ORDRE JURIDIQUE INTERNATIONAL, ECRITS DE DROIT INTERNATIONAL, 1995, PP.429─436.

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION