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しかしながら、長崎地裁は、上記のような経緯、状況下になされた本件逮捕が公海自由の原則を蹂躙する程明白な違法不当なものであるとまでは到底断じ難いとして、違法な疑いのある身柄拘束下で作成された被告人両名の供述調書の証拠能力は否定したものの、右逮捕手続段階における瑕疵がひいては憲法31条の精神に反するものとして公訴提起行為自体までも無効ならしめるものとは認められないとして、被告人両名につき不法出国罪での有罪を認めた事例。

(ハ) 排他的経済水域(専管水域)内での追跡

8] 南京号事件(長崎地判昭和60・10・28)7

(違反行為〜追跡〜逮捕地─専管水域内)

日本の漁業専管水域内で違法操業中の韓国漁船南京号が、同船を日本国と大韓民国の間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第1条1の漁業に関する水域等において大韓民国国民の行う漁業の禁止に関する省令(以下「日韓省令」と略す。)第1条、第3条の禁止区域内操業罪の現行犯として逮捕しようとした海上保安庁の巡視艇の停船命令を無視して逃走し、その際に巡視艇の接舷および追跡を断念させようと突然急角度で左転舵して巡視艇の進路直前に進出し衝突の危険を生ぜしめたという事件につき、同船船長が日韓省令違反、刑法第95条の公務執行妨害罪および第125条第2項の艦船往来危険罪に問われ、長崎地裁において肯定された事例。

7 前掲書(注2)230以下参照。

 

 

 

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