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ボンドにより違反者が釈放され、押収物が返還されたとき、担保金は、主務大臣が保管することとされ、違反者が出頭してこなかったり、返還された押収物を提出しなかった場合には、求められた期日から1か月が経過したときに担保金は国庫に帰属する(EZ漁業法第26条第1項・第2項本文・第3項及び海洋汚染防止法第67条第1項・第2項本文・第3項)。ただし、その期日の翌日から起算して1か月を経過する日までに、その期日の翌日から起算して3か月を経過する以前の特定の日に出頭するか、または押収物を提出する旨の申出があった場合は、違反者がその特定の日に出頭せず、または押収物を提出しなかったときに、担保金はその日の翌日に国庫に帰属する(EZ漁業法第26条第2項但書・第3項及び海洋汚染防止法第67条第2項但書・第3項)。

そして、担保金は、事件に関する手続が終結した場合など、その保管を必要としない事由が生じた場合には、返還される(EZ漁業法第26条4項及び海洋汚染防止法第67条第4項)。

これが釈放後の担保金の取扱に関する法である。

このようなわが国におけるEZ漁業法及び海洋汚染防止法に定められているボンド制度において、その担保金の性質をどのようにとらえるかはひとつの問題である34

立法過程での政府見解は、行政手続として、行政機関が将来の刑事手続の円滑な進行を図るために担保金の納付を求めることによって、違反者の刑事手続への出頭を確保するとともに、返還された押収物の提出を確保しようとするものであると説明されている35

しかし、現実には、刑事手続の円滑な進行をはかるために担保金が機能しているとはかならずしもいえないであろう。ことに漁業活動の場合、外国船舶による無許可操業などでは、違反者が出頭し又は提出を求められた押収物を提供することは、あまりないであろう。その意味では、担保金制度は、出頭してこない者に対する罰金の先取りという機能を果たしているということができる36

34 国連海洋法条約第292条は、「速やかな釈放」制度を規定しているが、これをめぐっての裁判例であるいわゆるサイガ事件に関する国際海洋法裁判所の判断では「保証金その他の金銭上の保証の提供後の釈放」の性質決定についてかならずしも明らかではない。山本草二「沿岸国裁判権への介入とその限界─即時釈放の事例をめぐって─」海洋法条約体制の進展と国内措置131頁以下参照。

35 秦野裕・衆議院運輸委員会議録11号20頁

36 この担保金の性格については、拿捕された者の釈放と船舶その他の押収物の返還の見返りとして提供される金員であり、一連の刑事手続きの進行を担保するとともに、出頭などに応じなかった場合にその金員を国庫に帰属させることとして刑事手続き進行を妨げたことによる制裁ととらえることと解されている。もっとも、実際には、違反者が担保金を提供し、釈放された後に出頭することはまず想定されないので、その意味では、事実上、罰金と同じ効果を持つものといえよう(山本徹弥「国連海洋法条約関連法(3)」時の法令1532号16頁)。

 

 

 

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