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もっとも、海洋汚染防止法違反の事件では、定期的にわが国に寄港する外国船泊の船長又は乗組員が違反を起こすこともあり、そのような場合には、違反者が、出頭し、又は提出を求められた押収物を提供することもありうることは想像に難くない。実際にも、刑事裁判が行われた事例も報告されている37

なお、担保金の返還は、「事件に関する手続きが終結した場合など、その保管を必要としない事由が生じた場合」であるが、これには、違反者が出頭したときに不起訴処分になった場合、裁判手続きが終結した場合がある。そして、違反者が担保金の返還を受けたにもかかわらず、罰金を支払わずに帰国したような場合、担保金制度の実効性を確保するために、裁判確定後、刑の執行が終了していない段階も、いまだ手続きが終結した場合とはいえず、担保金を国庫に帰属させうると解すべきであろう38

 

6 おわりに

 

ここで、簡単にボンド制度と刑事訴訟法との関係を整理しておきたい。

わが国のボンド制度の特徴は、1]押収した船舶の返還とともに船長・乗組員の釈放も規定している、2]釈放決定機関は司法警察員たる海上保安官・警察官及び検察官という行政機関である、3]起訴前の釈放である、4]保証内容は刑事手続の円滑な遂行のためにある、ということが指摘できよう39

37 わが国の担保金制度の運用は、平成8年が20件、平成9年が50件、本年が5月11日現在10件とのことである。

そのうち、排他的経済水域における事案が、平成8年5件、平成9年17件、平成10年5件となっている。やはり、多くは出頭してこない(そのための処分は、起訴猶予)。

このうち出頭してきたのは、平成8年が2件(いずれも罰金130万円)、平成9年が4件(処分結果は、罰金150万円、起訴猶予、30万円、不明)である。

38 小倉・前掲解説119頁。もっとも、このような解釈が国連海洋法条約との整合性をもつかは検討の余地があろう。

39 五十畑健雄「ソ連漁船コンバイネル号漁業水域内無許可操業事件」海上保安事件の研究247頁参照。

 

 

 

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