日本財団 図書館


2 外国船舶による排他的経済水域での汚染と執行

 

(1) 排他的経済水域で外国船舶によって船舶に起因する汚染が行われたとき、国連海洋法条約第220条は、船舶の現在地によって、沿岸国による執行が認められる範囲と要件を、二つの場合に分けて規定している。第一は、第1項の規定する、船舶が沿岸国の港または沖合の係留施設に任意にとどまる場合で、この場合、沿岸国は、第七節の規定に従うことを条件として、自国の法令の違反について手続を開始することができる。

第二は、第3項の規定する、沿岸国の領海または排他的経済水域を航行中の場合で、この場合、沿岸国は、自国の法令に違反したと信じるに足りる明白な理由があるときには、船舶の識別・船籍港・寄港地に関する情報および違反確認に必要な情報の提供を要請することができる。そして、第5項で、第3項の規定する情報の提供が拒否された場合または提供された情報が明白な実際の状況と明らかに相違しておりかつ事件の状況により検査を行うことが正当と認められる場合で、違反により著しい海洋環境の汚染をもたらしまたはもたらすおそれのある実質的な排出が生じたと信ずるに足りる明白な理由があるときには、違反に関連する事項について物理的な検査を実施することができる旨、定められている。更に、第6項では、違反が沿岸国の沿岸もしくは関係利益または沿岸国の領海もしくは排他的経済水域の資源に著しい損害をもたらしまたはもたらすおそれのある排出が生じたとの明白かつ客観的な証拠がある場合には、第7節の規定に従うこと及び証拠により正当化されることを条件として、自国の法律に従って手続(船舶の抑留を含む。)を開始することができることが、規定されている。

(2) 国内法上、船舶からの海洋への油の排出は、海域を特定せず、海洋汚染防止法第4条によって規制され、その違反は、第55条第1項によって故意犯は1,000万円以下の罰金、第2項によって過失犯は500万円以下の罰金の対象とされている。この規定はまた、船舶の旗国を特定していないため、日本船舶にも外国船舶にも適用されるが、日本船舶の場合には海域を特定せずすべての海域にわたって適用されるのに対して、外国船舶の場合には一定の制限の加わることが考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION