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(ロ) 判旨

6人のうち4人については他の理由で訴訟が中断されたが、2人については懲役7年6か月および3年6か月が言い渡された。

まず、追跡権が本件に適用可能かどうかについては、以下のように述べる。

公海条約にはイギリスは加盟しているが、セント・ヴィンセント・アンド・グレナディーンは加入していない。しかし、公海条約の23条は慣習法を法典化したものである。ポセイドン号の拿捕にかかわる追跡権は一般国際法上認められている権限であって、条約は宣言的なものであり、このような慣習規則はイギリスのコモン・ローに取り込まれている、として追跡権の適用を認めた。

次に、追跡権の行使態様については、ポセイドン号とデルヴァン号の関係について、両船が公海条約23条3項の「母船とこれと一団となって作業する舟艇」の関係にあるとする。事前の打ち合わせによって禁制品の陸揚げを行った場合に23条3項が適用できるかを検討し、先例として、イタリアとカナダの例をあげて、これを肯定した。ただしそれらの先例はいずれも陸揚げを行った船の出港地が沿岸国であるのに対して、本件では、出港地がアイルランドで陸揚げ地がイギリスという違いがあるが、判決ではその違いによって本件での連関を否定すると取締りが不可能になるとして連関を認めた。

デルヴァン号のイギリス領海への入域とポセイドン号追跡の開始との間に時間的ひらきがあることについて、被告側は、追跡はデルヴァン号が領海に入域してすぐに開始しなければならなかったと主張した。判決では、共犯関係は麻薬が陸揚げされなければ成立しないものではないとして、追跡権は陸揚がなされなければ発生しないものではないとする。しかし、機動部隊がポセイドン号を停船させるように命令を受けた後、数時間が経過して追跡を開始したことについては、四囲の状況、海の状態や明るさから見て、これより早い時間には追跡、乗船、拿捕の目的は達成不可能であったことを理由に、夜明けまで追跡の開始が遅れたことは正当化されるとした。また、ポセイドン号の同一性と位置が常に機動部隊によって把握されており、デルヴァン号

 

 

 

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