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R. v. Mills and Others, unreported ruling on jurisdiction and abuse of process issues delivered in 1995 by His Honour Judge Devonshire at Croydon Crown Court(5)

(イ) 事件概要

1993年11月9日から13日にかけて、セント・ヴィンセント・アンド・グレナディーン船とイギリス船を用いて、イギリスに大麻6.25トン、末端価格2400万ポンドが不正に持ち込まれた事件。

積み荷はモロッコからセント・ヴィンセント・アンド・グレナディーン船籍のポセイドン号によって大西洋の公海上の地点まで輸送され、イギリス船籍の漁船デルヴァン号に洋上で積み替えられ、イギリスに陸揚げされた。セント・ヴィンセント・アンド・グレナディーンは、犯行当時、1988年の「麻薬および向精神薬の不法取引防止のための国連条約(国連麻薬等ウィーン条約)」には未加盟であった。

不正持ち込みが行われることは事前通報により情報が得られており、税関の指揮のもとに、取締りのための機動部隊が編成された。機動部隊はヘリコプターを配備した海軍の軍艦、フリゲート鑑、補助艦艇からなっていた。機動部隊とは別に税関職員による小隊も編成されていた。

デルヴァン号はアイルランドのコーク港から11月9日の午後出航した。同船には税関、警察職員の内偵者が乗船していた。11月9日夜には、ポセイドン号が公海上にいることがレーダーによって確認されていた。11月10日10時25分までにポセイドン号とデルヴァン号はシリー島の西100マイル、アイルランドの南100マイルの公海上で落ち合い、デルヴァン号がポセイドン号を離れる同日14時40分まで積み荷の積み替えを行い、3.25トンの大麻をデルヴァン号に移したが、悪天候のため、すべての積み替えは行われなかった。

デルヴァン号はポセイドン号を離れた後、イギリス南海岸方面に進み、ポセイドン号は南西方向の大西洋方面に進んだ。ポセイドン号には機動部隊の船艇が追尾し、デルヴァン号については11日早朝より税関監視船が監視を行っていた。税関のとった作戦はデルヴァン号に積み荷を陸揚げさせてから積み荷と陸上の犯人を確保するという方法であったため、両船をすぐに拿捕はしなかった。

 

 

 

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