日本財団 図書館


(12) 阪村幸男、停船権の法理、海上保安大学研究報告昭和41年度第1部66頁。

(13) 国司彰男、大陸棚、排他的経済水域における実力強制の方法とその限界について、我が国の新海洋秩序第2号所収50─51頁。

(14) 細野嘉昭、公海警察における停船命令、海上保安の諸問題387頁以下。

(15) 清野惇、罰則を中心とした漁業関係法規の研究、法務研究報告書第49集第1号58頁以下。

(16) 前出、清野惇、罰則を中心とした漁業関係法規の研究76頁。

 

5. 継続追跡権の行使と公務執行妨害罪の成立について

 

継続追跡権を行使している間に、被追跡船に乗り移った、追跡中の公務員に対して、暴行・脅迫を加えて公務執行を妨害した場合に、公務執行妨害罪が成立するかどうかという問題があった。この問題は、従来刑法の場所的適用効力範囲の関連で議論されてきた。追跡している我が国の巡視船に犯人を引致して、そこで犯人が公務執行を妨害した場合には、刑法第1条第2項と、同第95条により公務執行妨害罪が成立する。しかし、公海上にある外国船に海上保安官が乗り移り、逮捕しようとして、犯人が暴行・脅迫を加えたばあいには、刑法の場所的効力が及ばないので公務執行妨害罪は成立しないと解されてきた(17)。しかしながら、平成8年6月に領海法が改正され、領海及び接続水域に関する法律となり、その第3条と5条に必要規定が整備されたことから、公海における外国船上での我が国の公務員による職務執行に関し、公務執行妨害罪が成立すると解されるようになった。その初の適用が、冒頭に引用した第3満久号事件の第一審判決である。

領海及び接続水域に関する法律の第3条は、「我が国の内水又は領海から行われる国連海洋法条約第111条に定めるところによる追跡に係る我が国の公務員の職務の執行及びこれを妨げる行為については、我が国の法令(罰則を含む。第五条において同じ。)を適用する。」と規定する。そして、追跡権は、本来は、沿岸国の国内法令の実効性を確保するため、その領域主権に服する内水・領海内で開始された管轄権行使の継続をみとめるという趣旨である。この点につい

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION