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て、「具体的には、領海等で外国船舶が法令違反を犯した場合に領海等の外まで継続して追跡し、当該船舶を取り締まることができる権利であり、慣習国際法として認められてきたものであるが、1958年の公海に関する条約及び国連海洋法条約において明文化された。また、我が国においてはこれら国際法の範囲内で、刑事訴訟法等の法令に基づいて主に海上保安庁により行使されてきた。しかしながら、今後、船舶の高速化に伴う追跡の機会そのものの増加及び取締りに対する妨害行為の悪質化、過激化が大いに懸念されることに加え、近年においても追跡により外国船舶に移乗した公務員に対し集団で暴行を加えるといった事件も発生していた。このため、国連海洋法条約上認められる追跡権の実効性を確保するための必要最小限の適切な措置にとどまる限度において、罰則を含む沿岸国の法令を適用することは国際法上も許容されていることから、今般国連海洋法条約を締結し、領海外の水域における公務員の職務の執行に係る法令の適用について規定することと併せ、追跡及び追跡を妨げる行為に関する法令の適用についても手当てすることとしたものである。本条の規定を設けることにより、領海外で追跡権を行使する場合において、外国船舶上で捜査等を行っている公務員に対してこれを妨げる行為としての暴行、脅迫等が行われたときには、従来は適用されなかった刑法の公務執行妨害罪等の罰則が適用し得ることとなった。

『追跡に係る我が国の公務員の職務の執行』とは、追跡権の行使として行われる司法警察職員による刑事手続等の行為をいい、『これを妨げる行為』とは、追跡に係る職務を執行する公務員に対し暴行、脅迫等を加えることにより、あるいは偽計によりその職務の執行を妨げることとなる行為であり、具体的には、取締官に対する暴行行為や取締船の往来を妨害する行為、犯人隠避等の捜査活動を妨害する行為等が当該職務の執行を妨げることとなる場合にはこれに該当することとなる。

『我が国の法令』には、我が国の公務員による追跡権の行使の根拠となる法令及び追跡権の行使を実効あらしめる法令等が含まれる。具体的には、追跡権行使の根拠となる法令には、刑事訴訟法、海上保安庁法、関税法、警察官職務執行法、自衛隊法等が、追跡権の行使を実効あらしめる法令等には、追跡に係

 

 

 

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