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いずれにしても、法律上、停船させることができるという根拠がありさえすれば、そのような強制権限を行使するために、当然に踏むべき手順の一つと理解されているように思われる。もしそうであれば、明確に停船命令違反を処罰するという規定がある場合を除いて、停船命令そのものには、意思の伝達とその後に起こり得る事態を想起させる効果はあるというものの、法律行為として捉えることはできないものと思われる。この点につき、庁法第18条(改正前)の強制処分権について、「本条の処分は、いずれも警察執行機関である海上保安官の職務執行のための手段的処分であることからみて警察処分(行政処分)と解することには疑問があり、むしろ即時強制の権限を認めた規定であると解するのが妥当のように思われる。本条の各種処分は、いずれも一応は海上保安官の下命という形式でなされ、その下命に応じない場合に初めて実力を行使して、警察上必要な状態を実現することになるであろうが、それは警察下命に従わないためになされるいわゆる行政執行(行政法学上の直接強制)ではなくして、必要の程度に応じて即時強制を行うべきものとする警察比例の原則の結果にすぎないと解せられるのである(16)。」とするものもある。ともあれ、停船命令は、実務上そして海事慣習上当然の手続きとして使われてきたものであることは否定できない。庁法に規定する「船舶の進行を停止させて」が、「船舶を停船させること」であり、従って「停船」を実現するに必要な連続するすべての行為を包括的に「停船処分」と称することとすれば、「停船命令」は、臨検、拿捕等に必然的に伴う停船処分の実行のための手続の一部である。停船を命ずる権限は、法律(庁法)が船舶を停船せしめることを規定していることから、それに当然に付随して認められる権能として、停船命令を発することができるものと考えられる。

(10) 海上保安事件の研究・国際捜査編98頁。

(11) しかしながら、国際的規約〔L〕は、モールス符号では、「ト・ツー・ト・ト」である。しかし漁業法関連省令では音響信号も発効信号も「ツー・ト・ト・ト・ト」で、数字の〔6〕である。旗と音響等とは異なっている。国際的には果たしてどうなのであろうか。

 

 

 

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