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かつて制定された海上公安局法(未施行)は、その第13条で、停船命令等として、「海上公安官は、海上において犯罪を捜査し、又は犯人若しくは被疑者を逮捕するため真にやむを得ないときは、必要な限度内において、左に掲げる処分をすることができる。

一 船長又は船長に代わってその職務を行う者に対し、一時、船舶の進行を停止し、又はその出発を中止すべきことを命ずること(二号以下略)」と規定されていた。

この場合であれば、法律として「船舶の進行を停止すべきことを命ずる」であるから、停船命令が具体的に書かれていたといえる。

次に、学説等では、停船命令や停船処分ということについてどのように理解しているかを見てみる。ある見解は、停船権の法的性格ということについて、「『停船権』の規定の方法には、通常同じく『停船命令権』と呼ばれるが、二種類ある。一は間接強制による停船権で停船命令を命じそれに不服従のばあいに刑事罰又は行政罰で間接的に強制する方法で、即時強制の権限が与えられていないものである。前記小型機船底びき網漁業取締規則第9条(停船命令)と第11条1号(罰則)、旧中型機船底曳網漁業取締規則第26条1項(停船命令)と第28条(罰則)はこの種のものである。二は、直接強制による停船権で、予め停船命令を命じないでも実力による停船を行う方法で、『停船処分権』と名づけられうる。行政法学では即時強制に含まれる。『船舶の進行を停止させる』という方式をとり、刑事手続および海上保安庁法第18条の停船はこの種のものである。この種のものも『停船命令』といい、前記指定漁業の許可および取締等に関する省令第90条等および海上公安局法第13条はこの例であるが、これは命令といっても、比例原則上通告としての停船命令であって、下命としての停船命令ではなく、事実上のものにすぎない(12)。」と分析している。停船させることができる権能は即ち、停船を命じることであるから、停船権は停船命令権と呼んでも同じことであるとし、むしろ、庁法適用の停船処分については、停船命令のあるなしにかかわらず、それは停船命令権といってよく、停船を強制するための実力行使には、停船命令という形式の存在は影響しないとの見解であると思われる。また、ある見解では、

 

 

 

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