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観、航海の態様、乗組員、旅客その他船内にある者の異常な挙動等周囲の事情から合理的に判断して、海上における犯罪が行われるおそれがあると認められる場合において、停船を求めたにもかかわらず、正当な理由なく停船しない船舶に対し、他に適当な手段がないと認められる場合には、停船(進行を停止)させるための強制措置を講ずることができると考えられる。つまり、庁法にいう「船舶の進行を停止させ」は、「停船命令」を含む強制のシステムと理解しているものと考えることができる。しかしながら、庁法を施行するための政令や省令のレベルで、「船舶の進行を停止させる」手続き、つまりは「停船命令」を含む強制措置に関する手続きについて定めを置いているわけではない。

次は、漁業関係の命令である。小型機船底びき網漁業取締規則(昭和27年農林省令6)第9条は、停船命令として、「漁業法第74条第3項の規定による検査又は質問は、小型機船底びき網漁業に従事する船舶(許可を受けないで小型機船底びき網漁業に従事し、又は従事するおそれのある船舶を含む。)の船長、船長の職務を行う者又は操業を指揮する者に対し、停船を命じてこれをすることができる。

2. 前項の停船命令には、左に掲げる信号を用いるものとする。

一 昼間にあっては、停船信号(別記様式)を掲げ、又は約1秒の間隔をもって汽角、汽笛、その他の音響器により長声一発及び短声四発を連発する。

二 夜間にあっては、約1秒時の間隔をもって、せん光により長光一せん及び短光四せんを連せんし、又は前号と同様の音響信号をする。

3. 前項において「長声」又は、「長光」とは約4秒から6秒までの発声又はせん光をいい、「短声」又は「短光」とは約1秒時の発声又はせん光をいう。

指定漁業の許可及び取締り等に関する省令(昭和38年農林省令5)第90条もほぼ同じ規定である。ここでは「停船を命じこれをすることができる」ではなく、「停船を命ずることがある」という書き方になっている。そして、別記様式とは、政府間海事協議機関の採択した国際信号書に掲載の〔L〕旗のことである。このように、漁業関係の省令では、明確に「停船命令」という用語が出てくるので、我が国の国内法上の法令用語として使われているということは確かである(11)

 

 

 

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