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(5) 水上千之、継続追跡権について、海上保安大学校25周年記念論文集53頁。

(6) 新海洋法条約の締結に伴う国内法制の研究第3号99頁以下。

(7) 海上保安事件の研究、国際捜査編98頁。

(8) 海上保安事件の研究、国際捜査編98頁。

(9) 新海洋法条約の締結に伴う国内法制の研究、第3号99頁。

 

4. 停船命令の問題点

 

国連海洋法条約第111条には、停船命令や停船信号という用語を含む。国際的な方式としては、停船命令を発することは継続追跡のための重要な手続的要件とされており、それを履践さえすれば問題はない。しかし、国内法の問題としては、停船命令や停船信号については、国際基準を準用しているだけなのか、あるいは、法的根拠に基づいてなされることになっているのか明確ではないように思われるので、この点について議論を整理しておきたいと思う。先に引用した判例においても、「停船を命じた」とか「停船命令を発した」等と記述されているが、その法律的性質が明らかにされているわけではなさそうである。

ところで、我が国の法律の条文中に、「停船命令」または「停船処分」という言葉が使用されているものは見当たらないように思われる。平成8年法律第75号で改正された、海上保安庁法(以下庁法と略)第17条には、第1項の条文中に「船舶の進行を停止させ」の文語が挿入されたことと、第18条では、改正前も後も変わらずに、その第1項1号の中に「船舶の進行を停止させ」という用語が使われている。これは疑いもなく停船(stoppage of vessels)について規定したものであるが、「停船命令」とは規定していない。継続追跡権を行使するに当たり、その際の強制力発動の根拠、その国内法的権限の根拠の中心となるのが、海上保安庁法であることから、庁法に規定する「船舶の進行を停止させ」に関連させながら、一般的意味での「停船命令」について、どのような議論があるのかを概観してみたい。実務として、海上保安官は、航行中の船舶に対し立入検査をするため停船を求める場合は、汽笛又はサイレンを吹鳴して注意を喚起したうえ、手旗信号、国際旗りゅう信号、発光信号、拡声器等により行うものとする(10)。そして、庁法第18条によれば、海上保安官は、船舶の外

 

 

 

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