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・・・判示第2の犯行場所は、日本の新領海法施行令2条1項による領海線の外側であり、また、日韓漁業協定による漁業水域の外側でもあり、公海上である。

これに対して、弁護人は、被告人の漁業行為及び公務執行妨害行為につき、日本には取締り及び裁判管轄権がない旨主張した。

(判旨)

以上検討したところによれば、日本の領水における主権行使としての取締り及び裁判管轄権は、日韓漁業協定の規定及びその趣旨によって制約されるものではないというべきであるから、日本は本件水域における被告人の判示第一の漁業行為に関し取締り及び裁判管轄権を有し、被告人3名の判示第二の行為についても、右は判示第一の漁業行為に関して長崎海上保安部職員らが行った国連海洋法条約111条所定の要件を満たす適法な追跡行為に対して行われたものであるから、同条約及び新領海法3条により日本に取締り及び裁判管轄権があるものである。・・・長崎海上保安部所属の巡視艇「N」に乗船していた同保安部職員が第3満久号による判示第一の漁業行為を発見し、外国人漁業規制法違反で検挙しようとしたが、同船は被告人の命令により逃走を始めたため、右「N」がこれを追跡し、同保安部所属の巡視船「I」もこれに合流して追跡を続けたが、これに対し被告人及びその指示に従い被告人Yらが乾電池を投げつけるなどし、さらに同日午後2時54分ころ、大瀬埼灯台から真方位216度約17.4海里付近の海上(公海上;筆者注)において右「I」から同保安部職員海上保安官B外6名が第3満久号に接舷して移乗し、同A、B、Cが右舷側から、同D外2名が左舷側から船橋に上がろうとしたこと、被告人は、海上保安官が操舵室に入れば、第3満久号の舵を取り機関を停止されるため、それは防がねばならないと考え、船橋通路右舷側から、甲板から船橋に上がってこようとする海上保安官らに対し、一辺約4.5センチメートル、長さ約2メートルの角材を振り回して抵抗し、その際、被告人がめがけて振り下ろした角材が、Aのヘルメットを直撃したほか、さらに船橋通路に上がったDが被告人にとびかかったところ、被告人はDの顔面を手拳で殴打し、船外へ押し出して海に落とそうとしたこと、また被告人Yは被告人の「防げ」の声に応じ

 

 

 

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